某Dさんの妄想聞いて無茶苦茶マgナイが初めてヒカルを抱くときの話を書きたいなあと思って書いた話。R18のため18歳以下の方は閲覧ご遠慮ください。
こんなにしつこく追ってくる男は初めてだった。
「余輩の寵愛を受ける覚悟を決めろ。」
アジムステップから遠く、マグナイからのアプローチを逃れてエオルゼアにいたヒカルを捕まえてそういったマグナイに、それ以上拒否する言い訳を見つけることができなかった。
そもそも先に恋におちてしまっていたのはヒカルの方だ。
ただ、たまに彼のところを訪れて、愉快に話ができればいいと思っていた。その太陽をも射貫く瞳が、こちらを振り返ることなど思ってもいなかった。
彼の強引ともいえる愛を受けながら、いつこの時間が終わるのかとおびえていた。彼はきっと後悔する。
そう思っていた矢先に、いつも通りエオルゼアへ追ってきたマグナイと酒屋にいたときのことだ。男だらけの店内で、隣の集団から「ヤると相手が興味を無くすって言うだろ」という言葉が聞こえてきた。
そういわれればそうかもしれない。体を許した後、相手の態度が変わるというのは恋愛と勘違いしていた関係性でよくあるはなしだ。
ヒカルが自嘲気味に「もっともかもな。」とこぼすと、マグナイはおもむろにヒカルの腕を取って歩きだした。カウンターに必要以上の額の代金を置いて
「釣りはいらん。」
言い捨てると、そのままヒカルの制止も聞かずに宿へと流れ込んだ。
マグナイの寝室へ、半ば押し込まれるように連れ込まれたのと、マグナイが絶対に逃がさないという意思を表示するように、背中から苦しいほどに抱きしめてきたのは同時だった。
背中に感じる彼の体温と心音、それから坂を転がり落ちるような速度で早鐘を打つ己の心音で耳が痛い。
マグナイの唇がヒカルの首筋に触れる。
鱗と肌の境目を辿るように唇を落とし、そこをぺろりと舐めあげた。
全身の肌が泡立った。
この男はわかっているのだろうか、今彼が欲情をぶつけようとしている相手は、彼がずっと夢を見ていた可憐な乙女ではなく、骨ばって硬い、しかもこれが初めてではない阿婆擦れの男だ。
「マグナイ、待て。」
「十分待った。」
「やめろ、後悔する。」
「ヒカルが?」
「違う、マグナイがっ…うわっ」
マグナイの手が緩んだと思う間もなく、身長が変わらないヒカルの体を抱え上げ、ベッドへ運び込んだ。
「余輩がお前を抱きたいと思っていることを、何故否定する。」
ベッドの上におろされて、すぐ起こそうとした体を軽く押されて戻された。
「けど、俺は、女じゃない。手つなぐのと違うんだぞ」
驚くほど渇きを訴えてくる喉で訴えると、言い切った後にむせてしまった。
マグナイは少し思案するように、ヒカルの上で腕を組んで黙った後、徐にヒカルの右手を取った。
その手を己の下半身に持っていき、触れさせた。
そこに触れたヒカルが息をのむ。
「これ以上、待たせるな。他に言い訳は?」
「ヤって、あんたに興味無くされたら……困る。」
「ありえない。余輩を愚弄するつもりなら、聞き入れてやろう。」
欲情と強い意志できらめく瞳に射すくめられたヒカルは、言葉の代わりに、呆然とマグナイを見上げて首を振った。
マグナイが顔をよせて、角を絡めた。
渇いた音を響かせて、角がこすれる。
下にくみしいたヒカルの体が、それだけで小さく震えるのがわかった。
ヒカルは、硬く唇を結んで、マグナイの触れるところからうろこを割り、皮膚を貫いて体の芯に届く熱を飲み込んでいた。
こうして角をこすり合わせること自体は、もう何度も交わしたコミュニケーションなのに、まるで初めてのように体が固まる。
彼の顔が近くて、いつもより熱い吐息を感じ、それだけでどうにかなってしまいそうだった。
前開きではない服の裾からマグナイの手が入ってくる。
熱い。
火傷してしまいそうだ。
心臓がうるさい。
呼吸が浅くなってうまく酸素が吸えなかった。
苦しくて何度も呼吸を繰り返しているヒカルに気づいたのか、一度マグナイが体を起こした。
無自覚にこぼれていた涙を掬い上げるように頬を撫でて、頭をなでる。
「少し落ち着け。」
これが落ち着いていられる状況か、湧いて出た返事は言葉にならなかった。
マグナイの大きな手が、ヒカルの頭を撫で、首の後ろで髪を一つに束ねていた紐を解いた。
くっきりついた結び癖をほぐすように、何度もなでる。
無理にここへ押し込めたのと同じ手だと思えないほどやさしい手つきだ。
けれど、まるで火のように熱い。
彼の体温を確かめるように目を閉じて、ゆっくりと呼吸を繰り返す。うまく吸えなかった空気が、徐々に深く胸に入るようになった。
そのたびに、目の前にいるマグナイのにおいが体を満たしていく。
溶けてしまいそうだった。
口から飛び出しそうなほどだった心臓が、彼のにおいに包まれて少しずつ落ち着いてきた。それでも普段と比べれば早い。
瞼を上げると、黄金色の瞳が、驚くほどの慈愛を注いでいて、頭の芯が痺れる。
「触れるぞ。」
しびれ切った脳髄が低い声に揺さぶられる。ヒカルは何度も小さくうなずいて答えた。
一度離れた手が、再び服の下へもぐりこむ。
ふれた手のひらは、流行り、熱い。
また早鐘を打ち始める心臓をなだめるように、意識して深く呼吸を繰り返していると、マグナイの指先が胸に触れ、まだそこに触れていないのに、期待と緊張で乳首が固くとがるのが自覚された。
マグナイは、服をたくし上げながら見えた胸部と腹部の先目に見えたふくらみに驚いた。男の胸だが鍛えられた筋肉で膨れて、触れると柔らかい。
喉が鳴る。
段差を作る境目を確かめるように指を這わせる。
唇を固く結んだヒカルが、鼻先から湿った声を漏らした。
下から胸をつかんで、指先を中心へ伸ばすと、そこに、無機質な手ごたえが返ってきた。
心当たりがあって、一気に服を首元までめくりあげた。
呼吸をするたびに上下する胸に、生来赤みの強い肌に、くっきりと生えて、両の胸のいただきの先に、とがった乳首に、黄金色のピアスが、ついていた。
彼の体にいかなる理由であっても傷をつけ、それを所有の証のようにするものが許せなかった。
それを、まだ彼と付き合い始める前に怒ったことがある。
ひょうひょうと笑う彼の顔は笑っていたが、目だけは氷のように冷めて「俺はアンタのものじゃない。」そう言い放った言葉がまざまざとよみがえる。
糸の切れた凧のようにすぐに行方をくらます彼をようやく捕まえたとき、舌に嵌めていたピアスは、顎をつかんで外したのだが、こちらはまだ着けていたのかと怒りと嫉妬が溶け合った思いがこみ上げる。
一方で、寝具に縫い留められ、のぼせた顔でこちらを見上げた彼の、恋色の肌に黄金色の冷たいピアスが輝いているのは、いやに扇情的だった。
「ヒカル、これは、どういうつもりだ。貴様はまだ余輩以外の男とつながっているのか?」
「ちが……あっ…んんっ」
右側のピアスの先をつまみ上げて軽く引くと、肌が伸びてついてくる。
ヒカルが言いかけた言葉が、甘い音にかき消されて止まった。
引いた手をはなして、金具に押し付けるようにも見込むと、背中がしなってまた閉じた唇からこぼれるように、嬌声があがった。
「そんなにこれが良いのか?」
両手を両の胸にあて、乱暴だろうとわかるくらいに金具で硬い手ごたえを返すそこをつまみひねる。
腹筋を震わせながら、ヒカルが左右に首を振った。
さっき、何か言いかけたときにこぼれた声を聴きたい。
けれど彼は口を引き結んでくぐもった声を漏らすばかりでもどかしかった。
ずっと無抵抗だったヒカルの手が胸の先をいたぶるマグナイの手をつかんだ。
すがる程度の力だから、振り払うことは絶やす方が、押し返そうとする力にこたえて手を離した。
ヒカルは、早くなった呼吸を繰り返し、放った声は少しかすれていた。
「違う、俺は今マグナイだけ、だ。」
うるんだ眼が揺れる。
「ならばこれは、何だ。」
視線を浴びただけで感じるのだろうか。ヒカルが少し体を震わせて息をのんだ。
「あんたに、……アンタに、外してほしかったんだ。」
思いもよらない言葉にマグナイが目を見張った。
ヒカルの瞳が揺れるのは、熱に浮かされているからではなく、不安に震えているからかもしれない。
彼が小さく首を傾げた。
声にならない、唇の動きだけで、「だめか?」、とこぼし、自嘲するように顔がゆがむ。
マグナイは体の芯に渦巻いた、嫉妬と、怒りと、劣情の混じり合ったものを吐き出すように深くため息をついた。
腕をつかむヒカルの手を、指を絡めて一度握る。
ヒカルがうかがうようにマグナイの顔を見る。体は一人前にでかいくせに、こういう時はまるで小動物のようだ。
握った手のひらを親指でなで、ほどくと、その両手をヒカルの頭に持っていき、髪の毛をぐちゃぐちゃとかき乱してやった。
「そういうことは、もっと早く言え。」
マグナイの指が、不慣れな手つきで華奢なピアスの装飾部とキャッチをつかもうとするが、うまくいかない。
キャッチをつかもうとすると、装飾部をつかむ指が挟まれている乳首に触れて、ヒカルが甘い声を漏らす。
何度かつかみなおして、やがて装飾部をつかむのをあきらめた。
しっかり乳首本体をつかんで固定し、キャッチをそっと引き抜く。
油断すると見失ってしまいそうなほどに小さなキャッチを、ヒカルの頭が乗ている枕元に転がした。
なくなってしまってもかまわないだろう。そう思った。
キャッチを外し、根元の軸を押し込んで装飾部を少しうかすとつかみやすくなった。
改めてつまんで引き抜く。
引き抜く瞬間、ヒカルの体がぶるりと震えた。
マグナイの仕草を無言で見ていたヒカルと角を合わせた。
こつ、こつと何度か当てた後体を起こす。
「着脱の度にこうでは、さぞかし不自由だったろう?」
外したピアスを目の前に突き出してやると、ヒカルは首を横に振り、つ、と視線をそらした。
「違う、あんたが、するからこうなるんだ。」
思わずもう一度角をこすりつける。
あふれる愛しさを込めて。
「自棄に素直ではないか。ようやく腹が決まったか。」
答えがないが、否定もなかった。
一度こつ、と角を当てて顔を離すと、本来赤い肌が、それでもわかるほど朱色に染まっていた。
「よくわかった。」
もう一つのピアスに手を伸ばす。
二つ目は簡単に取り外すことができた。
二つのピアスを枕元に放り、ピアスの質量を失っても立ち上がったままの乳首の先をやんわりと押す。
先端を下に向かって押すと、先ほどまでピアスが通っていた穴がくっきりと見えた。
「あんたも、付けるか?ピアス。」
覚悟を決めたか、ということには答えないくせに、そういうことは簡単に言ってのける唇に親指を乗せて、じわ、となでると、すぐに目を潤ませて唇を閉じた。
ふれるか触れないかの力で、薄い粘膜を痛めてしまわないようにそっとなでる。
そんなところまで敏感なのかと感心する。
「ヒカルが望むなら、やがて叶えてやろう。」
望みを問うと、困ったような顔をする。
それはずっと変わらない。
やがて本当に彼が望んだ時はどうするだろう。この体に杭を打ち込むのか、熱に狂った今の頭では、少なくともはっきりと判断できなかった。
装飾を無くした胸に改めて触れる。
傷口を労るように舌を這わせる。
ヒカルが、あ、と声を漏らしたと、すぐに自分の手で口をふさいでしまった。
舌の上に転がる小さい硬さをいとおしいと思った。
押し撫で、こね回し、吸い上げる。
口をふさいだだけでは収まらない声が、強く吸うたびに零れ落ちた。
マグナイの体の下で、ヒカルの下半身が熱を訴えてくる質量が次第に大きくなっていた。ズボンの下から熱を訴えてくるそれは、さぞかし苦しかろうと思われた。
己の手でここまで熱を持った体に息をのむ。ズボンに手をかけて、引き下ろそうとすると、
がば、
とヒカルが体を起こした。
マグナイの手を止めるように、すっかり熱くなった手のひらで、マグナイの体を押し返す。
「いいっ、ここからは、おれが、やるから、マグナイはそんなところ見るな。」
懇願しながらも目を合わせようとしない。
「何を言っている。」
「見るな、頼む、お前にがっかりされたくない。」
マグナイは押し戻そうとするヒカルの手を取り、その手のひらに何度も唇を押し当てる。
そうしてから、指を絡めてぐいと引く。
ようやく彼がマグナイを見た。
「見せろ。」
「見るな。」
「余輩の愛を疑うのか。」
ヒカルは刃で刺されたかのような顔をして、言葉にならなかった何かを飲み込んだ。
「見せろ。」
「マグナイ……。」
「余輩が見たいと、言っている。」
角の外側をこつこつと当てた。
何度かなだめるようにそうしていると、握っていたヒカルの手がマグナイの手から離れた。
「わかった。」
ヒカルは自らズボンの金具を外し始めた。
かちゃ、と小さな音がして留め金が外れる。
腰のところに手をかけて、マグナイの体の下で器用にズボンをおろしはじめた。
下着も一緒におろしているのか、すぐにそこがあらわになった。
これから抱かれようとしている男のものにはもったいないと思わず思ってしまう大きさのそれが、布地の圧迫から解放されてぼろりと外気に頭をもたげた。
マグナイの視線から逃れるように視線をそらし、ひざを曲げてズボンから足をぬく。
胸のあたりで引っかかっていた上着も、脱いでしまった。
生れたままの姿をさらしたヒカルが、再び布団に体を横たえた。
白いシーツの上で濃い色の肌がまるで艶やかだ。
マグナイは、視線をそらしたままのヒカルのペニスをやんわりとつかんだ。
「っ……!」
おびえたようにマグナイを見る。
視線がこちらに戻ったことがうれしくて、マグナイの口元に笑みが浮かんだ。
手のひらに握りこんだオスを、やわやわとしごき始めると、ヒカルは首を振って両手で口をふさいだ。
もともと熱に硬くなっていたせいか、たちまち反りあがって、色の薄い体液をこぼし始めた。
それを塗り広げるように先端をくるりとなでてやると、口を抑える手の下から甘い嬌声が上がった。
傷つけてしまわないように、体液のぬめりに任せて触れるか触れないかの力加減でくりくりと円を描く。
促されるように淡い色の体液があふれ続けるが、射精するには刺激が足りないのか、もどかしそうに腰が揺れた。
口をふさいだままのヒカルに、出したい?と聞くと、ヒカルはこくりと一つ首を縦に振った。
片手の指を先端を愛撫しながら、逆の手を根元に添え、下から何度かやわやわとしごき上げる。最後に裏筋にあてるように、一気にこすりあげると、促されるままに熱を吐き出した。
口を覆う手のひらの下で、声を必死に飲むのがわかった。
吐精の脱力感で一瞬呆然としていたが、はじかれた様に体を起こし、
「あっ……、マグナイ、わるい……。」
汚れたマグナイの手を取った。
白い体液にまみれた手を両手でつかむと、自信が吐き出したばかりのそれを、なめ始めた。
ヒカルのまるでザクロのように真赤な舌先が、白い液体を掬い上げて手のひらを這う。
すでに興奮を訴えていた下半身が、ますます煽られて窮屈だった。
「ヒカル。」
名を呼んだだけの声が熱に浮かされ湿って溶けた。
すっかり手のひらをきれいにしてしまってから顔を上げる。
唇についた残滓を舐めとってマグナイを見る。
唾液でつやを増した唇。
手を伸ばして親指の腹でなでた。
「ヒカル、いれたい。」
ヒカルが目を見張った。
小さく何度か頷く。
「少し、待って……。ほぐすから。」
そう言って腰を上げる。
尻尾をぴんと持ち上げて、背中側から、これからマグナイを受け入れようとするところに指を差し込んだ。
ベッドに手をついて、少しずつ指を沈める。
こらえるように目を伏せた。
ぴんと上げたしっぽが、ゆら、と揺れたと思うと、ピクリと跳ねる。
マグナイは目の前でなされていたことにあっけにとられていた。
一人で後ろを慰めながら、時折揺れる腰がひどくいやらしかった。
欲情が全身を染め上げて、このまま彼を押し倒し、食らいつくしてしまいたい衝動がこみあげてくるのを、つばとともに飲み下す。
「ヒカル、余輩がする。」
「……え?」
ヒカルの体を抱き寄せて、入ったままの手を上から撫でた。
「どこでも触れたい。」
抱き寄せて重ねあった胸の向こう側で、一段と強く心臓がはねた。
ヒカルの手が体から離れる。
マグナイは、利き手でヒカルの腰を撫で、尻尾の付け根のあたりから指を這わせて割れ目を下り、ようやく見つけた入り口に恐る恐る指を沈めた。
第一関節まで入れただけなのに、ヒカルがん、と小さく声を漏らした。
一度ほぐされたからか、もっと狭いと思っていたそこはやわらかかった。
ゆっくり指を沈める。
熱く熟れた内壁が、入ってくる指をいざなうようにうごめいて、指をぎゅ、と締め上げた。
入るために、ゆっくりと内側から押す。
思ったよりもずっとしなやかに体内がしなった。
初めて触れる人の中の感触を確かめるように、丁寧に撫でる。
指が届く場所をくまなく触れていると、ヒカルの体が甘い声とともに跳ね上がった。
様子を探るように、そこを強弱付けてなでると、そのたびにしっぽと体が震えた。
「ここが、いいのか?」
「んぁっ……んっ、きく、か、触るかどっちかに、してくれっ…あっ」
ヒカルがマグナイの肩に額を押し付けて、こぼれ出る嬌声の間にようやく言葉を紡いだ。
指を増やしては同じことを繰り返す。
しつこい、と一度抗議の声が上がった。
それでもなお、まだ程度がわからずに丁寧に中をほぐそうとすると、ヒカルがマグナイ、とかすれた声を漏らした。
「マグナイ、も……、いいから……、入れて…。」
薄暗い部屋の中に、ヒカルの泣き入りそうな声。
一言ずつ、声量が落ちて、かえって鋭く耳に届くような気がした。
「マグナイが欲しい。」
「余輩も、ヒカルが欲しい。」
抱き上げていたヒカルの背中を支えながら、ベッドにそっと横たえた。
汗ですっかり濡れた衣を脱ぎ、押されて苦しい下半身をくつろげる。
すっかり固くなった欲情の塊が、ヒカルの前に雄々しくそそり立った。
それを見たヒカルが、声もなくボロボロと涙を流し始めた。
マグナイが目を見張ってヒカルの涙をぬぐった。
拭っても拭ってもこぼれ続ける涙に、拭うのをあきらめて頭をなでることにした。
「ヒカル、どうした。泣くほどいやなら、無理はするまい。」
ヒカルが涙を止められないまま首を振った。
「違う、あんたが、ちゃんと俺で勃ってるのが、うれしくて……。」
言葉にしてさらに涙が止まらない。
角をこすり合わせて、なだめるように何度か軽く押しあてる。
その距離でヒカルがまた言った。
「中折れさせたらどうしよう……。」
「喧嘩を売っているのか?」
ヒカルの膝の裏に手を差し込んで押した。
持ち上げて、広げようとすると、ヒカルが膝を合わせたまま抵抗した。
「せめて、うつ伏せが、いい。」
「何故だ。」
「顔、見られたくないんだ。」
「今更何を言う。」
抵抗を無視して膝を押し曲げ、体を寄せる。
ヒカルは両手で顔を覆ってしまった。
「ヒカル。」
「だって、変な顔したら、嫌になるだろ…っ」
「ならん。」
足から手を放して、顔を覆う両手首を握って顔から引きはがした。
顔をぐっと寄せると、角の先と先がぶつかり合う。
「何度も言わせるな。ならん。余輩はお前の鱗の一枚一枚まで愛してる。全部見せろ。」
アジムステップに君臨する男の、燃えるような黄金色の瞳にまっすぐ見据えられて、ヒカルは頷くことしか、できなかった。
マグナイの腹のあたりで抵抗していたヒカルの足が、ためらうように開いた。
再び顔を隠さないようにつかんだままだった手を、己の首に回させる。
その手がすがるように巻き付いたのを確かめてから手を離し、素直になった足にまた手をかけた。
今度は抵抗なく開いた足をさらに押し広げる。
暴力的なまでの欲望の暴走で、口の中につばが広がった。
それを飲み下す。
入り口をもとめて、体を寄せる。
先ほどまで指でさんざん触れていたあの熱い場所を探すのだが、うまく、探り当てられなかった。
もどかしさに焦りがつのり、余計にうまく見つからない。
思わず、は、と熱い息を吐いて焦りを逃すと、首に絡まっていたヒカルの右手がするりと離れた。
離れた手が伸びてきて、マグナイのペニスに触れ、
「ここ……。」
顔を真っ赤にしながら、その入口へいざなった。
ペニスの先に、そこだけ特別熱くなったやわらかい入り口が触れる。
またヒカルの手がマグナイの首に戻った。
ふれた先に、ようやく体を沈める。
穿つ内壁の熱さと柔らかさに、思わず声が漏れた。
ヒカルが迫ってくる肉塊を飲み込もうと、止まりそうになる呼吸を意識して繰り返す。
マグナイが体を深く沈めるたびに、ヒカルが苦し気に声をこぼした。
「ま、ぐない…っ、やっぱり…もうっ、入らないっ」
「受け入れろ、まだだ。」
「でかすぎるんだよっ」
及び腰に離れそうになった腰を掴んで逃がさない。
「もう少しだ。」
「うそつけぇ……んっ。」
さらに腰を進める。
マグナイを飲み込もうとうごめく内壁が、指で届かなかった場所に触れて狭くなった。
まだ根元まではいらないまま、ヒカルの弱いところを狙って腰を振る。
「あっ…んっ…」
大きすぎる圧力と、熱い塊で直接そこをこすられる刺激で混乱したヒカルが首を振った。
何度かそれを繰り返しては、狭くなった奥壁をさらに穿ち、進んだ。
「う、そだろ…んなぁ、おく…やっ…」
マグナイのペニスを包む胎内がまた大きく飲み込むように動いてまた少し体が沈む。
意識して深く息を吐いていたヒカルだったが、与えられる刺激に耐えかねて、苦しそうに浅い呼吸を繰り返した。
ふれられたことのない体の深くまで犯されて、怯えに似た表情。
その首筋に食らいついてしまいたいのをこらえ、角をこつこつと当てると、安堵したのか少し体の力が抜けた。
そのすきを狙って一気に腰を進める。
ついに、
「入った…。」
「はい、った…?」
いつも饒舌な口から、呂律が危うくなった言葉が返ってくる。
「ああ、全部入った。」
ヒカルが安堵したように表情を崩した。
その相貌からまた涙がこぼれる。
「随分よく泣くな。」
このまま腰を振りたい衝動をこらえて、マグナイの額に汗がにじむ。
「うれしい。」
こぼれ続ける涙は止まらないまま、ヒカルの顔がほころぶ。マグナイの首に回した腕をぎゅ、と引き寄せた。
「動くぞ。」
相手の返事を待たずに腰一度根元まで貫いたものを引き抜き、一気に突き上げた。
マグナイのしたで赤い肌をしたからだが弓なりにしなった。
胸と胸が合わさって、汗に濡れた肌が張り付いて離れる。
ふれた先に火がついたような心地がして、離れるのがひどく惜しい。
同じことをヒカルも思ったのか、離れるのを惜しむように首に回した手に力がこもった。
それに応えるように背中に腕を回し抱き寄せる。
一度離れたからだが密着して、皮膚を通して心音が振動のまま伝わってくる。
抱きしめたまま角をこすり合わせ、そのまま彼の体を抱き上げて膝の上に乗せた。
「や、っ、ンンンッ」
姿勢を変えるはずみで内壁をこすられた刺激と、自重で体が深く沈み不覚を突き上げられた刺激で悲鳴が上がる。
熱く熟したヒカルの体がマグナイをあおる。
たまらずまた腰を振り始めた。
「まっ、あ、あああ……っ!!!!」
嬌声の合間に、まって、と吐息がすがる。
本当はもっと丁寧に、彼の待って、も少しは聞き入れて、もっと大切に抱くつもりだった。
けれど熱に浮かされてとてもそんな余裕がない。
ヒカル、ヒカル、とうわごとのように繰り返すと、熱に溶けたヒカルの目と視線が絡み合った。
ヒカルが恥じらうように角を何度かコツコツと合わせ、何か言いたげに唇を寄せる。
今にも失われてしまいそうな理性をかき集め、腰を止めた。
「なんだ?」
受け続けていた刺激を失った肉壁が、次の刺激を求めるてマグナイを締め上げ、かき集めた理性が砕けそうになる。
「マグナイ、」
「聞いている。」
ヒカルのほほに手を添えて、少しこちらに向くように促すと、再び彼と視線がぶつかった。何度かためらうように瞬きをした後、口を開く。
「気持ちいい?」
悲鳴を上げ続けて少しかすれた声が、不安そうに問うてくる。
その両頬を両手でつかんで、視線がのがれないよう固定して答える。
「いい。」
ヒカルが、いまだかつて見たことのないような、喜びと安堵が相まって定まらない、ふにゃりとゆるんだ笑顔をこぼした。
「そう不安がらずとも、」
再び、ヒカルの腰を掴むと、ぎりぎりまで引き抜いて一気に貫いた。
「ひぁっあぁっ!!」
安堵にほころんだ顔の中で、大きく目が見開かれる。
「体で、わからせてやろう。」
彼の弱いところを狙って何度も腰を振る。
ヒカル、と名前を呼ぶと、彼の口からも、マグナイ、と悲鳴の間に聞こえてくるのは気のせいではないだろう。
首にすがっていた腕がいつの間にか背に回り、たくましい筋肉を覆う皮膚に爪を立てる。
「ンンンッ、あっ……あぁぁあっ…は、んっ、グナイ、マグナイッ……もっ…」
ヒカルの足が緊張してびくびくと震え始めた。
「も、あっ……も、も、だめっ……っ!」
赤いからだが大きく弓なりにそれて、二人の間でたまった熱を吐き出した。
同時にヒカルの中が、マグナイを一層強く締め上げる。搾り取るようなその刺激に、マグナイもこらえきれず熱を腹の奥に吐き出した。
頭が真っ白にはじけて、どちらの心音かわからない、どくどくと早い鼓動が鼓膜に直接響く。
荒い吐息が耳元で聞こえて、それがヒカルのものだと認識した。
無事を確かめるように、背中をなでてやると、熱の残滓で体が小さく震える。
「ヒカル……?」
角に口を寄せて呼びかけると、数度、彼が頷く気配がした。
体が満たされただけではない幸福感が腹の底から指の先まで満ちていくのを感じる。
「ヒカル、ヒカル。」
ささやくと、再び彼が応えるように頷いた。
それでも何度も繰り返し呼び続ける。
やがてヒカルが顔を上げた。
まだ情事の余韻で赤い顔。
熱にうるんだままの瞳がマグナイをとらえる。
「なに?」
「愛してる。」
ヒカルの目が見開いて、恥ずかしそうに笑った。
返事の代わりだろうか、角をこすり合わせる。
本当は言葉が欲しかった。それでも今日は十分だ。
マグナイはヒカルの背に腕を回し、まだ熱の残る体をそっと抱きしめた。
それからしばらく、「ヤると興味を無くす」という言葉を否定するように、マグナイがいつも以上に口説くヒカルに愛を説いていたが、それはまた別の話。
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