YouTubeで見たシーソーイスが可愛すぎたのでばなさに座って欲しかった。落書き的な。
本編の世界線の後ナサニエルが五体満足健康にバーティミアスと住んでるというご都合主義設定なので深く考えないで読んで欲しい。やおいってやつですよ。
本編の世界線の後ナサニエルが五体満足健康にバーティミアスと住んでるというご都合主義設定なので深く考えないで読んで欲しい。やおいってやつですよ。
バーティミアスと喧嘩した。
喧嘩の原因は何だったかも思い出せない。
いつも通りの日常会話の中で、ちょっとした、本当にちょっとしたことで食い違って、変な言い争いになってしまった。
朝食のトーストに添える卵の焼き方のこととか、そんなことだったような気がする。それとも、雨の日に傘を差すかレインコートを着るかだったか。とにかくそんな、思い返しても思い出せないようなちょっとしたことだ。
お互いなぜか融通ができずに、そのまま不毛な言い争いを数分続け、バーティミアスが大袈裟に肩を竦めて溜息をつき、朝からこんなんじゃストレス過多なマンドレイクさんが血圧上がりすぎて倒れちまう、と言ってふらりとどこかへ出かけてしまった。
お陰様で、いつもは自分は食べやしないのに、同じテーブルについてやいのやいのと賑やかなバーティミアスがいる昼食の時間も嫌に静かだった。
そろそろ一息入れろとティーセットを持って部屋に侵入してくる時間もとっくに過ぎた。
ちょっと頭を冷やすには長すぎる放浪じゃないかと、じわりとはらの底あたりが冷たいような嫌な感覚を覚える。
昔なら召喚で無理矢理呼び戻すことも出来たが、今、あらゆることを共にすごした過去を経て、バーティミアスが自由にこちらとあちらを行き来できるようになったのだ。今の彼はナサニエルに召喚されているのではなく、自分の意思でここに住んでいた。
だから、嫌気がさしたら帰ってこなくなることも、充分ありうることだ。
まさか、と誰も聞いていない部屋でこぼし、落ち着かない心が足を屋外へと向かわせる。
冬の足音が聞こえる色味の薄い秋空のした、アテもなく彷徨うと、ベンチがあった。こんな所にあっただろうか、新設されたのかもしれない。
家の中で頭を抱えるよりましだとそこに腰を落ち着ける。朝方の喧嘩を思い出して溜息をつきながら顔をおおった瞬間、
「よう、わかったか?」
ベンチの逆走から聞きなれた声が聞こえて咄嗟に顔を上げた。
「バーティミアス、今までどこに……?!」
「久々の再会の開口一番がそれか。さみしいね。ま、そんな寂しい扱いをされちゃうおれから、よーくわからせてやるよ。」
「なにをだ……?」
突然、浮遊感に襲われて咄嗟にベンチの手すりにしがみついた。
「このベンチ、頭冷やしがてらの旅で見つけたんだ。いかしてるだろ?シーソーの仕組みで浮き上がった方が相手をちゃんと思ってたら手を離して滑り降りてきてハッピーエンドだ」
「ば、馬鹿なことするな!」
バーティミアスが優雅に足を組みかえると、手すりにしがみついたままのナサニエルを見上げ、不敵に笑った。
「わからせてやるよ、こんなもんじゃないだろ?」
ウィンクしてみせるバーティミアスの体が沈んだ。ナサニエルの体がさらに浮かぶ。
「うわっ……!やめろ!」
「手をはなしちまえばいいのに。」
大仰なジェスチャーと共にため息を着きながら、さらにバーティミアスが沈み、ナサニエルが高く上がる。バーティミアスの体が、重みを増しているのだ。
意地になって手を離さないでいたナサニエルだったが、急勾配に長時間耐えうる腕力は持っていない。手が震え始めて、悔しさにぎゅ、と唇をかんだ。
「何がしたいんだ!」
「細いのに、意外と粘るなぁ、ほらっ!」
また一段と角度がきつくなる。
その弾みでナサニエルの手がついに離れ、バーティミアスの方へ滑り落ちた。
バーティミアスはナサニエルへ向かって手を伸ばし、滑り降りてくる体を受け止めると、そのままギュッと胸に抱き込んだ。
「思い知ったか、これが俺の愛の重さだ。うたがってんじゃねぇぞ。」
「はっ……?!?!!」
ナサニエルの白い首元から頭のてっぺんまで急激に血が上がって真っ赤になった。
思い出した。今朝の喧嘩、ナサニエルがバーティミアスに「いつでもぼくのことなんか置いていけるもんな。」と軽い調子で言ったところから始まったのだ。少し拗ねただけのつもりだった。
バーティミアスに苦しいほど抱きしめられて、己の体温がうつった彼の体の熱と、いつまでも上がり続ける気すらする己の体温と、バクバク脈打つ心臓と、足りない酸素で頭がクラクラした。
「…………ごめん」
抱きしめる胸に向かってこぼした謝罪は彼の耳に届いただろうか。
日がかげりはじめる秋の昼下がり、抱きしめ合うふたりに冷たい風が吹き付けたが、どうやら彼らには気が付かない程度のものだったようだ。
〜おわり〜
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