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[ 2024/11/25 04:45 | ]
【ヒカマグ】尻尾でじゃれる二人が見たかった
ヒカルがまた訪れたと、兄弟たちが口にしているのは聞いていたが、折りが悪く方々に出かけ、先約を消化し、あちらこちらへ移動していたせいで、顔を見ないまま夕暮れを迎えた。明けの玉座に戻ると、彼が一度訪れたと伝えられたが、もう彼のにおいも残っていない。
あいつは待つということができないのか、ぼやきながらやっと玉座に戻った足で外へ出る。角度が落ち始めた太陽が、地平線に向けて落ちていく様が目に焼き付いてまぶしい。
明けの玉座の高台から、壮大に広がる草原を見下ろすと、羊が多くはなしてあるあたりに、見慣れた人影が。夕日に照らされてその姿がくっきりと影を落としている。
羊の群の中の大きい岩の上にぽつんと座り、まるで羊飼いのようだ。
冒険者の背中を目指して草原をわたる。
わざと足音高く近づくが、振り返る気配はない。そんなに背筋を伸ばしてすわっているくせに、うたた寝でもしているのだろうか。
あぐらをかいて座るヒカルの真後ろにたつと、振り返らないまま、彼は座る場所を少し端にずらした。
一人分空いた隣に、マグナイも黙って座る。
さっきまでヒカルが座っていた体温が岩にまだ残っている。
盗み見た横顔からは特段の感情を読みとれず、彼はただ静かに沈みゆく夕日を眺めているようだった。
マグナイも倣って夕日を望む。
羊が時折鳴く声や、草をはむかすかな音さえ聞こえてきそうだ。
吹き渡った風が髪をなでて心地がいい。
ヒカルが座っている左側だけ、肌がじりじりと焦げるような心地がした。
ふと思いたって、尻尾をそちらへのばす。こつん、堅い外皮に覆われたヒカルの尻尾にマグナイの尻尾の先が当たる。そのまま何度か上下させて尻尾を叩くと、彼の尾もパタパタと上下し始めた。
相変わらず二人揃って夕日を眺めたまま背中の後ろで尻尾をパタパタと小突きあう。
やがて太陽が沈みきる頃、ヒカルの尻尾が器用にマグナイの尻尾にからんで地面にぱたんと押しつけた。
そこでようやく顔を合わせて、弾かれたように二人で笑う。
「余輩にあわずにこんなところでなにをしておる」
「あんたこそ、いやに静かじゃないか。雪でも降るか?」
「失礼な。長兄たるものいついかなる時も揺らがぬものだ。」
「ふーん?」
からかうように口の両端を上げるヒカルの顔が闇に解ける。
まるで彼が失われるようで、胸の奥がざわりとした。
振り切るように絡まった尾をはなし立ち上がった。
「戻るぞ、皆が待っている。」
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[ 2021/02/07 08:48 | Comments(0) | ヒカマグ ]

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