朝布団から出ようとする服をつかんで「行くな」といってみた。顔を除かせ始めた太陽が窓から差し込みうっすらと輪郭以外も見え始める朝の時間。おおよそのものはまだ眠り、静寂に包まれた
褥の外の空気は冷たい。暖かい床から一足先に抜け出して、もしかしたらマグナイが目覚めるのも待たずに旅だったかもしれない背中を呼び止めた。
彼は振り返り、まだ闇の方が強い部屋の中で目元をゆるめほほえんだ。
「おはよう、マグナイ。」
姿勢を落として額に落とした唇が柔らかい。
はずみで互いの角がふれてこつんと軽い音が鳴った。
口づけた額に額をあわせてくる。ふれる体温から滲む安堵感で、自然瞼が降りた。
「行ってくる」
「行くな」
ヒカルは額をはなすと眉尻を下げて笑った。
「思ってもみないこと言うなよ。」
「全く思っても見ないわけではないぞ。」
マグナイはヒカルの頭に手を伸ばした。長い間長かった髪を短めに借り上げた頭に触れると、独特の触感で指が楽しい。
その手触りで遊ぶように、上から下へ、ではなく下から上へ何度か撫でると、ヒカルがくすぐったそうに笑った。
「困ったな、オレは行かないと」
「わかっている、待っているのだろう」
そう、待っているのだ。彼を待っているのは自分だけではない。こうして彼を閉じこめるわけには行かない。
ヒカルがもう一度額をあわせたのを合図に手を離す。
今度はすべて手放して、自分も体を起こした。
外気に触れた体を、ヒカルが覆い隠すように抱きしめた。
「行ってくるな」
「死ぬなよ」
また今日もアジムステップの山脈を越えて日が昇る。人々が起き出す頃、彼はもうここにはいないだろう。
褥の外の空気は冷たい。暖かい床から一足先に抜け出して、もしかしたらマグナイが目覚めるのも待たずに旅だったかもしれない背中を呼び止めた。
彼は振り返り、まだ闇の方が強い部屋の中で目元をゆるめほほえんだ。
「おはよう、マグナイ。」
姿勢を落として額に落とした唇が柔らかい。
はずみで互いの角がふれてこつんと軽い音が鳴った。
口づけた額に額をあわせてくる。ふれる体温から滲む安堵感で、自然瞼が降りた。
「行ってくる」
「行くな」
ヒカルは額をはなすと眉尻を下げて笑った。
「思ってもみないこと言うなよ。」
「全く思っても見ないわけではないぞ。」
マグナイはヒカルの頭に手を伸ばした。長い間長かった髪を短めに借り上げた頭に触れると、独特の触感で指が楽しい。
その手触りで遊ぶように、上から下へ、ではなく下から上へ何度か撫でると、ヒカルがくすぐったそうに笑った。
「困ったな、オレは行かないと」
「わかっている、待っているのだろう」
そう、待っているのだ。彼を待っているのは自分だけではない。こうして彼を閉じこめるわけには行かない。
ヒカルがもう一度額をあわせたのを合図に手を離す。
今度はすべて手放して、自分も体を起こした。
外気に触れた体を、ヒカルが覆い隠すように抱きしめた。
「行ってくるな」
「死ぬなよ」
また今日もアジムステップの山脈を越えて日が昇る。人々が起き出す頃、彼はもうここにはいないだろう。
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