クリスマス政三ss
現パロ
二人は大学生で二人とも一人暮らし
現パロ
二人は大学生で二人とも一人暮らし
華やいだ町並みを行く足どりが自然速まる。
空気が肌を切るように冷たい。それでも政宗は焦る気持ちを落ち着かせることができなかった。
最近やっと合い鍵を受け取ってくれた三成が、先に部屋で待っているのだ。
まさかあの三成がクリスマスを理由に誘ってくれるとは夢にも思っていなかった。
政宗と三成は二人とも高頻度でバイトのシフトを入れているため、お互いのスケジュール調整のためにシフト一覧を見せ合っていた。
十二月のシフトが決まったときも例に漏れず一覧を書いた紙を交換した。それを見た三成が
「夕方からしか空いていないのか」
と言い出した。
「ん、まあ今月は昼シフト多いからな。なんか予定あったのか?」
「クリスマスだ。まあいい。準備は私がしておくから、一緒にケーキを食べよう」
このときの政宗の頭の中と言えばまっしろだった。
クリスマスとは何者で、なぜ一緒にケーキを食べる必要があるのかもいまいち理解できない程度には真っ白だった。
「……なんだ、嫌なら嫌とい…」
「違う、違う違う違う!!!」
政宗の沈黙を拒絶と理解したらしい三成が自分の誘いを自ら反故にしようとしたところでようやく事態を理解し、大声で彼の言葉を遮った。
何の構えもせずに腹から声を出したため、息があがる。
三成は呆気にとられているようだ。
「食べるぜ、ケーキ。」
その言葉に三成が安堵したように唇の両端を少し上げた。
笑っている。
政宗は不覚にもその表情に心臓が口から飛び出るかのような錯覚を覚えた。
「わかった。待っているから、帰りに食事などしてくるな」
「待っている…ってどこで?」
「お前のアパートでだ。仕事帰りによそによるのも非効率だろう。…迷惑か?」
動揺のあまり次の言葉を失った政宗は咄嗟に首を左右に振って答えた。当の三成は当たり前のように言葉を続ける。
いつもより饒舌だ。気のせいだろうか。
「お前の都合がつくのなら、そのまま泊まっていく」
そこまで回想したところで信号が青に変わった。青の合図に機械的な音が耳に届いて我に返る。
緩みきった頬を叩いてまた帰路を急いだ。
小脇に抱えたプレゼントを持ち直して、今からフレンチにでもいくのだろうか、これ見よがしに腕を組んだ男女の群れをぬって街を抜けた。
静かな住宅街、駅からしばらく歩いたところに政宗のアパートはある。
駅から離れてはいるが、バイトで生活費を賄う一学生には利便性より値段が大事。
帰り道、こうも胸が踊って道程が長いと思ったのは初めてだ。
途中ふと足を止めて携帯電話を取り出す。
受信メールフォルダを開いて、今朝送られてきた三成のメールを開いた。
『ケーキも料理も用意しておくからなにも買って来なくていい』
これが夢でないと再確認してまた顔が緩む。
この短いメールが、まるで催促されているようでたまらない。
角を曲がってアパートが見える。自分の部屋に灯りが点いているのがわかって堪らず走った。
暖房の効いた部屋でうとうとと浅い眠りに落ちていた三成は、ピンポンと鳴った呼び鈴で目を覚ました。
こんな日に来客だろうかとドアスコープを覗くと政宗が立っていた。
鍵でも忘れたのだろうか。
ドアをあけると寒さで鼻の頭が赤くなった政宗がいきなり抱きついてきた。
政宗は三成を抱き締めたまま勢いで部屋に押し込み、後ろ手にドアを閉めた。
ドアを閉めて鍵も閉めて、もう一度強く抱き締めて、そしてようやく腕を放した。
「ただいま、三成」
「……おかえり」
腕が緩んだ隙に三成がするりと逃げる。振り返らずにテーブルに向かい、皿に乗せた料理をレンジで暖め始めた。
政宗が靴箱の上に鍵を置いて、文字通り浮き足立つ一歩手前のような心持ち。
レンジを睨む三成を後ろからもう一度抱き締めようとしたところで
「座れ」
一喝された。
よくみれば三成の耳が赤い。政宗は今さら照れ臭さに素直に頷いてすっかり料理が用意された机に座った。
そのまま無言の部屋にレンジの暖め終了を知らせる甲高い音が鳴った。
三成が皿をテーブルに置くと、食欲を擽る香りが湯気と共にふわりと立ち上った。
クリスマスらしくローストチキン。三成の手料理は既に何度か食べている政宗だが、改まったイベント用の料理は初めてだ。
素直な胃袋がぐうと鳴って、三成が声をあげて笑った。
何がツボに入ったのか、なかなか止まらない笑い声。ひとしきり笑ってようやく三成が顔を上げた。
「そんなに、腹が減ったか」
「上手そうな料理が悪い」
「…さらりと恥ずかしいことを言うな。」
顔を赤らめた三成が、話しは終いだと言うように手をあわせた。
政宗も倣って手をあわせる。
「いただきます」
「いただきます」
他愛ない話をしながら食事を終えた。
二人分に丁度いい小振りのクリスマスケーキはもちろん三成の手作りだ。ケーキを切り分けたところで、政宗が三成にプレゼントを渡した。
薄くて幅のある、プレゼントの形にしては珍しい包装をしげしげと眺めてから封を開くと、落ち着いた色合いの着物が出てきた。
茶道部でしばしば茶会のある三成へ、似合うだろうと選んだ色だ。濃い藍色は三成の白い肌がよく映えるだろう。
「高いのは手が出ないから、大したもんじゃないけどな。」
「いや、充分だ。感謝する。」
三成が目を細めて、大事そうに着物を包み直した。
そしておもむろに立ち上がり、部屋の隅に置かれた自分の鞄へ向かう。
鞄の前に屈んで、中から何かをむんずと掴み、心なしか顔を赤くして、自分の席ではなく政宗の方へ戻ってきた。
「どうした?」
珍しく見上げる角度で、対峙した三成は、何か言いたそうに口を開いては閉じ、開いては閉じして、最後に一度大きく深呼吸した。
そして開かれた手にあったのは赤いリボン。ずいぶん長いそれを、三成は自分の頭に、ヘアバンドのように結んだ。
呆気にとられた政宗の膝に、半ばやけくそに座り、いよいよ真っ赤になった顔で言った。
「クリスマスプレゼントだ」
「really?!」
「お前が、これがいいと言っただろ!」
耳どころか白い首筋まで朱色に染まった三成。
そういえば、と猛烈な勢いで政宗は記憶を手繰り寄せた。
あの、お誘い記念日の続きだ。
「プレゼントはなにがいい」
「…頼んでいいのか」
「悩んだが決まらなかった。本人に聞くのが一番速い。」
「そうだな~。三成の頭にリボン巻いて、三成がプレゼントでもいいぜ~。」
冗談のつもりだった。
実際三成も真面目に答えろと政宗の背中を叩いた。
だからあれは冗談で流されたものだと思っていた。
思っていたのだが…。
政宗はまさかの対面状態で自分の膝に座る三成の背中に手を回し。ぎゅ、と抱き寄せた。
「三成、プレゼントがそれで、しかも泊まりって、わざとやってるだろ」
「下衆がっ、ケーキが先だ」
「いいって、どうせ後で腹も減るから」
また反論しようと開いた口に口づけをして言葉ごと飲み込んでしまった。
何度か角度を変えながらキスを重ねるうちに、三成の腕が政宗の首に回される。
okの合図だ。政宗は三成の頬に軽いキスをして、いい忘れていた言葉をおくる。
「メリークリスマス」
強制終了!!!!
空気が肌を切るように冷たい。それでも政宗は焦る気持ちを落ち着かせることができなかった。
最近やっと合い鍵を受け取ってくれた三成が、先に部屋で待っているのだ。
まさかあの三成がクリスマスを理由に誘ってくれるとは夢にも思っていなかった。
政宗と三成は二人とも高頻度でバイトのシフトを入れているため、お互いのスケジュール調整のためにシフト一覧を見せ合っていた。
十二月のシフトが決まったときも例に漏れず一覧を書いた紙を交換した。それを見た三成が
「夕方からしか空いていないのか」
と言い出した。
「ん、まあ今月は昼シフト多いからな。なんか予定あったのか?」
「クリスマスだ。まあいい。準備は私がしておくから、一緒にケーキを食べよう」
このときの政宗の頭の中と言えばまっしろだった。
クリスマスとは何者で、なぜ一緒にケーキを食べる必要があるのかもいまいち理解できない程度には真っ白だった。
「……なんだ、嫌なら嫌とい…」
「違う、違う違う違う!!!」
政宗の沈黙を拒絶と理解したらしい三成が自分の誘いを自ら反故にしようとしたところでようやく事態を理解し、大声で彼の言葉を遮った。
何の構えもせずに腹から声を出したため、息があがる。
三成は呆気にとられているようだ。
「食べるぜ、ケーキ。」
その言葉に三成が安堵したように唇の両端を少し上げた。
笑っている。
政宗は不覚にもその表情に心臓が口から飛び出るかのような錯覚を覚えた。
「わかった。待っているから、帰りに食事などしてくるな」
「待っている…ってどこで?」
「お前のアパートでだ。仕事帰りによそによるのも非効率だろう。…迷惑か?」
動揺のあまり次の言葉を失った政宗は咄嗟に首を左右に振って答えた。当の三成は当たり前のように言葉を続ける。
いつもより饒舌だ。気のせいだろうか。
「お前の都合がつくのなら、そのまま泊まっていく」
そこまで回想したところで信号が青に変わった。青の合図に機械的な音が耳に届いて我に返る。
緩みきった頬を叩いてまた帰路を急いだ。
小脇に抱えたプレゼントを持ち直して、今からフレンチにでもいくのだろうか、これ見よがしに腕を組んだ男女の群れをぬって街を抜けた。
静かな住宅街、駅からしばらく歩いたところに政宗のアパートはある。
駅から離れてはいるが、バイトで生活費を賄う一学生には利便性より値段が大事。
帰り道、こうも胸が踊って道程が長いと思ったのは初めてだ。
途中ふと足を止めて携帯電話を取り出す。
受信メールフォルダを開いて、今朝送られてきた三成のメールを開いた。
『ケーキも料理も用意しておくからなにも買って来なくていい』
これが夢でないと再確認してまた顔が緩む。
この短いメールが、まるで催促されているようでたまらない。
角を曲がってアパートが見える。自分の部屋に灯りが点いているのがわかって堪らず走った。
暖房の効いた部屋でうとうとと浅い眠りに落ちていた三成は、ピンポンと鳴った呼び鈴で目を覚ました。
こんな日に来客だろうかとドアスコープを覗くと政宗が立っていた。
鍵でも忘れたのだろうか。
ドアをあけると寒さで鼻の頭が赤くなった政宗がいきなり抱きついてきた。
政宗は三成を抱き締めたまま勢いで部屋に押し込み、後ろ手にドアを閉めた。
ドアを閉めて鍵も閉めて、もう一度強く抱き締めて、そしてようやく腕を放した。
「ただいま、三成」
「……おかえり」
腕が緩んだ隙に三成がするりと逃げる。振り返らずにテーブルに向かい、皿に乗せた料理をレンジで暖め始めた。
政宗が靴箱の上に鍵を置いて、文字通り浮き足立つ一歩手前のような心持ち。
レンジを睨む三成を後ろからもう一度抱き締めようとしたところで
「座れ」
一喝された。
よくみれば三成の耳が赤い。政宗は今さら照れ臭さに素直に頷いてすっかり料理が用意された机に座った。
そのまま無言の部屋にレンジの暖め終了を知らせる甲高い音が鳴った。
三成が皿をテーブルに置くと、食欲を擽る香りが湯気と共にふわりと立ち上った。
クリスマスらしくローストチキン。三成の手料理は既に何度か食べている政宗だが、改まったイベント用の料理は初めてだ。
素直な胃袋がぐうと鳴って、三成が声をあげて笑った。
何がツボに入ったのか、なかなか止まらない笑い声。ひとしきり笑ってようやく三成が顔を上げた。
「そんなに、腹が減ったか」
「上手そうな料理が悪い」
「…さらりと恥ずかしいことを言うな。」
顔を赤らめた三成が、話しは終いだと言うように手をあわせた。
政宗も倣って手をあわせる。
「いただきます」
「いただきます」
他愛ない話をしながら食事を終えた。
二人分に丁度いい小振りのクリスマスケーキはもちろん三成の手作りだ。ケーキを切り分けたところで、政宗が三成にプレゼントを渡した。
薄くて幅のある、プレゼントの形にしては珍しい包装をしげしげと眺めてから封を開くと、落ち着いた色合いの着物が出てきた。
茶道部でしばしば茶会のある三成へ、似合うだろうと選んだ色だ。濃い藍色は三成の白い肌がよく映えるだろう。
「高いのは手が出ないから、大したもんじゃないけどな。」
「いや、充分だ。感謝する。」
三成が目を細めて、大事そうに着物を包み直した。
そしておもむろに立ち上がり、部屋の隅に置かれた自分の鞄へ向かう。
鞄の前に屈んで、中から何かをむんずと掴み、心なしか顔を赤くして、自分の席ではなく政宗の方へ戻ってきた。
「どうした?」
珍しく見上げる角度で、対峙した三成は、何か言いたそうに口を開いては閉じ、開いては閉じして、最後に一度大きく深呼吸した。
そして開かれた手にあったのは赤いリボン。ずいぶん長いそれを、三成は自分の頭に、ヘアバンドのように結んだ。
呆気にとられた政宗の膝に、半ばやけくそに座り、いよいよ真っ赤になった顔で言った。
「クリスマスプレゼントだ」
「really?!」
「お前が、これがいいと言っただろ!」
耳どころか白い首筋まで朱色に染まった三成。
そういえば、と猛烈な勢いで政宗は記憶を手繰り寄せた。
あの、お誘い記念日の続きだ。
「プレゼントはなにがいい」
「…頼んでいいのか」
「悩んだが決まらなかった。本人に聞くのが一番速い。」
「そうだな~。三成の頭にリボン巻いて、三成がプレゼントでもいいぜ~。」
冗談のつもりだった。
実際三成も真面目に答えろと政宗の背中を叩いた。
だからあれは冗談で流されたものだと思っていた。
思っていたのだが…。
政宗はまさかの対面状態で自分の膝に座る三成の背中に手を回し。ぎゅ、と抱き寄せた。
「三成、プレゼントがそれで、しかも泊まりって、わざとやってるだろ」
「下衆がっ、ケーキが先だ」
「いいって、どうせ後で腹も減るから」
また反論しようと開いた口に口づけをして言葉ごと飲み込んでしまった。
何度か角度を変えながらキスを重ねるうちに、三成の腕が政宗の首に回される。
okの合図だ。政宗は三成の頬に軽いキスをして、いい忘れていた言葉をおくる。
「メリークリスマス」
強制終了!!!!
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