おすって×おすら
かきたいことだけかいた
かきたいことだけかいた
カオルはキスが好きだ。
唇を重ねるという文化にあまりなじみの無かったシルゲイだったが、角がないアウラ以外の種族は、唇を体のあらゆるところに触れて、時には唇同士を重ねて愛情表現をするらしい。
それを知ったのは召還士ギルドの、桃色の髪の毛が鮮やかなララフェルのキララ先輩に教えてもらったからだった。
あまり人と交わらずに生きてきたシルゲイは、そういう一般的には知られているモノを知らずに生きてきたので、彼女の助言には何かと助けられていると思っている。
初めて唇を重ねたときは、驚いた様子だったカオルも、最近は突然そうしても、くすぐったそうに笑うようになった。
「カオル、何を読んでるの?」
リビングのソファーに腰掛けて、珍しく分厚い本を読んでいたカオルに呼びかけると、頭の上についた耳がシルゲイの言葉を拾い上げるようにぴくぴくと動いた。
「今度、ちょっと治癒魔法覚えようかと思って、知り合いから借りてきた。」
「そうなんだ。カオルはよく怪我するから、良いと思う。」
カオルが座っているソファーの後ろにたって本をのぞき込むと、なるほど治癒魔法に関する記述が図解付きで書かれた指南書だった。
「俺が子供みたいな言い方するなよ。」
カオルが笑って本を閉じた。
彼はタンクで、いつも最前線で攻撃を受けているから怪我が多いのは本当なのに。
ソファーの後ろに立ったシルゲイを見上げるように顔を上げる。
その唇に、思い立って軽く唇を重ねた。
いつものようにカオルは少し瞬きして、くすぐったそうにわらう。
この笑顔が好きだと思う。
「シルはいつも突然だな。」
カオルの手が本からシルゲイの首にまわる。
もう一回、の合図だ。
両手で彼の頬を包んで、今度はゆっくり唇を重ねた。
柔らかい感触を確かめるように、何度か軽く吸うと、ちゅ、と小さく音が鳴った。
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