闇鍋大会で書いた物のお題のキャラを間違えてたやつ。
エスティニアン×ヴィエラヒカセン♀(百ちゃん)
イシュガルドのあれこれが終わった後の世界線。エスティニアンがヘタレだと許せない人は見ない方がいい
エスティニアン×ヴィエラヒカセン♀(百ちゃん)
イシュガルドのあれこれが終わった後の世界線。エスティニアンがヘタレだと許せない人は見ない方がいい
久しぶりに立ち寄ったクガネは、相変わらず色鮮やかで人が多く、にぎやかな街だlった。
エスティニアンはエーテライトを利用してのテレポートではなく、船を使ってクガネにやってきた。
特に急ぎの旅ではなく、たまには風情というものを楽しむのも悪くはないと思ったのだ。
イシュガルドから離れた彼は、行く先々で拾った情報をもとに、気ままに旅をしていた。因縁を果たした後のことなど考えてもみなかったが、殺意を根底に抱かずに生きていくだけでこんなにも世界が明るいとは思ってもみなかった。
依然立ち寄った際は通り過ぎるだけだった町に、百も冒険の途中立ち寄ったといううわさを聞いてやってきたのだ。
今は特別急ぎの依頼を受けているわけではない。
武装も解いて、身軽な姿で街を歩く。
動くたびに大きな白い耳を揺らす彼女の面影を追ってきた。
にぎやかな街並みに、跳ねるように船を降りて走り出す彼女の姿がありありと浮かんで、小さく笑いが漏れた。
らしくない、それも一人旅の気安さというものだ。
幸い空は気持ちのいい秋晴れ。
町を歩く人々の足取りも、軽いように感じる。
この町に来たらしいという情報だけで立ち寄ったため、彼女がどこにどういう用件で立ち寄ったのか、詳しいことはわからない。彼女の足取りを想像しながら、瞼の裏に浮かぶ背中を追いかけるように足を進めた。
長時間船に揺られた体は、動かない地面の上を歩きながらも、ありもしない揺れを感じて愉快だ。
港で情報を拾いつつ冒険者ギルドへ。高い建物を見上げると、その建物の塀を身軽に登っていく人影が見えた。冒険者だろうか。世界中で見かける彼らは、まったく思いもよらない行動に出る。
もしかしたら彼女も、百も登っているかもしれないと目をすがめたが、そもそもヴィエラ自体がいないようだった。
顔を下すと、マーケットへ続く道が目に入る。
この町ならではのデザインのアクセサリーなど手に入るかもしれない。
いつ会えるかわからないけれども、持っていれば会えた時の楽しみが増えると思いマーケットに歩みを進めようとしたところで、彼の足が止まった。
人ごみの向こうで、ぴょこんと人影の頭の上から白い耳が飛び出しているのが見えた。
遠目で明確にはわからないが、あのシルエットはきっと彼女だ。
駆け寄りたい衝動を抑えて静かに歩み寄ろうとすると、彼女の隣に、知らない男が並んでいるではないか。
たまたま隣にいるのではない。表情まで読み取れないが、言葉を交わしている気配がする。
胸の奥がうずいた。誰だ。
二人は触れそうな距離で肩を並べ、エスティニアンからどんどん遠ざかっていく。
気配を悟られないように追いかける。
エスティニアンも対龍戦のために修行を重ねて身ではあるが、彼と同等以上の力を持っている彼女であれば、エスティニアンの気配にいつ気づいてもおかしくはない。
そう思うとこれ以上距離を詰められなかった。
彼女が本当に百であるかどうか、その確信も得られないまま、それでも追わずにいられずあとをつける。
俺はいったい何をしているんだ、そんな言葉が一瞬頭をよぎったが、それで体を止めることはできなかった。
マーケットの人ごみを過ぎ、さらに町を進んでいく。
先ほどより人の気配が減ったせいで、意識して物陰に身を寄せながらついていかざるを得なくなった。
歩くたびに足の動きに合わせて揺れる耳。
ショートカットの白い髪の毛。
シルエットのわかりにくい服を着ているから、体格までは遠目にはわからないが、背格好は彼女に見えて仕方がない。
そんな彼女が、ついに隣の男と手をつなぎ、白昼堂々入っていったのは、望海楼だった。
クガネきっての温泉宿。
この町に観光で訪れるものであれば誰しもが立ち寄りたがる場所だ。
宿泊はもちろん、立ち寄り湯も歓迎しているこの宿には、大きな露天風呂もあるという。
そう、一人旅も親子連れも大歓迎。
風情溢れる建物と、海が臨める絶景で、恋人同士の宿泊にも人気だ。
二人はその宿の中に、仲睦まじく消えていった。
エスティニアンは身を隠すことも忘れて呆然とその場に立ち尽くす。
これがあの巨大な龍たちを数多ねじ伏せた男の姿とは、だれも思うまい。
人違いだろうか、しかしヴィエラ族自体が滅多に合わない種族なのだ。
それであそこまで後姿が似ていて、本当に他人ということがあるのだろうか。
他人の空似だと思おうとすればするほど、今まで経験したことのない感情がせりあがる。
胸の奥がチリチリと焼ける。
呼吸も苦しい。
果たしてちゃんと呼吸できているのだろうか。
船から降りたときはあんなにも軽く感じた足が、鉛のように重く感じられた。
宿に入ったものが早々に出てくることはないはずなのに、その場を動くことができない。
待ちゆく人が何人か、彼を怪訝そうに振り返りながら通り過ぎて行ったが、今のエスティニアンにはどうでもいいことだった。
「エスティニアン!!!!!」
突然後ろから耳慣れた明るい声が響いたと思った次の瞬間、背中にどんと強い衝撃が走る。
「うお?!」
半分魂が抜けていた彼は、踏みとどまることができずに衝撃のままつんのめり、2,3歩前へよろめいた。
長く動いていたこと自体を忘れていた心臓が、激しく脈打ちだす。
エスティニアンに衝撃を与えた正体が、背中から白い腕を回して抱き着いていた。
「何やってるのよ、こんなところで?!一人で温泉旅行なんてずるい!」
「ひゃ、百……?!貴様いつから?!」
「ちょっと呼ばれて、ウルダハ商館に来てたんだけど、こそこそ歩いてるエスティニアンがいたから面白くて追いかけちゃった」
「は?!」
先ほど宿屋に消えていった女が、百でなかったことへの安堵感と、求めていた彼女ではない誰かを完全に勘違いで追いかけていた姿を、ほとんどすべて見られていたことに、エスティニアンは二の句を継げなかった。
普段大きな動揺を見せない彼の動揺っぷり。
百は背中から抱き着いた手を離すと、エスティニアンの前に回り込んできっと下からにらみつけた。
「なあに、そんなに慌てて。私に見られたらまずいことでもしてたの?浮気?」
「違う!百に似た女が、知らない男と歩いていたから…‥!」
「追いかけてたの?!私と思って?!」
羞恥心から肯定できず、思わず黙り込むエスティニアン。
ちらりと目線をやった望海楼には、また一組、仲睦まじいカップルが吸い込まれていった。
「お前が…俺以外のやつと温泉に……入ったかと…思って…」
「エスティニアンとしか入らないわよ!ばか!」
むくれた顔が下から怒鳴る。
耳がピンと伸びで、怒らせてしまったなというのがありありと分かった。
それでも久しぶりに見た顔が懐かしくてたまらない。
「悪かった。もうしない」
今回の件については完全に己に非がある。
これ以上なにか言葉を並べるのも無様なだけだ、そう思って素直に謝ると、彼女の表情がくるりと変わり、楽し気にわらった。
「嫉妬ならまたしてもいいけどね」
「勘弁してくれ、それより、一緒に入るか?」
「ん?なにに?」
「温泉。俺となら、入ってくれるんだろ、相棒。」
百の白い肌にぱっと赤みがさす。
さっきまで楽しげだった顔が少しばかりうつむいた。
「あなたのおごりなら、いいわ。」
「よし、決まりだな。」
エスティニアンは、百の手を握ると歩き出した。
百も最初の数歩は引きずられるように歩き出す。
やがて肩を寄せ合って、望海楼の暖簾をくぐるのだった。
~この後めちゃくちゃ長湯した~
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