Twitterログまとめ。鶴丸登場
何の気配もなく、目の前に一升瓶が上から垂れ下がってきた。
「……たまには気が利くな」
今剣は目の前に降りてきた一升瓶を受け取る。ひんやりと冷たい感触が手のひらにかえってきた。
「こいつは驚いたな。お前、誰だ。」
背後から聞こえた声が愉しげに殺気をはらんでとっさに飛び退く。
素足に庭の泥がこすれて、月夜の静けさに乾いた音が響く。
先ほどまで座っていた縁側に立っていたのは、いつも来る彼ではなく、全身を真っ白で包んだ鶴丸だった。彼の手が、腰に下げたままの刀の柄にかかっている。まだ刀は鞘に収まったままだが、闇夜に浮かぶ金の瞳に抜刀の躊躇いは見られない。
「もう一度訊こうか、貴様は誰だ。」「いまのつるぎですよ。」苦し紛れに幼い方の彼を真似てみたが、鶴丸は唇の両端を持ち上げて不気味に笑っただけだった。鶴丸が一歩、歩みを進める。肌を刺すような殺気が空気を震わせた。分が悪い。今剣が逃げるために高く飛び上がったのと、鶴丸が刀を抜いて飛びかかったのはほぼ同時だった。とっさに己の刀を抜く。これでは恐らく抗うにたりない、背中を冷たいものがかけぬけた。次の瞬間、刀と刀のぶつかりあう音が響く。「何のつもりだ?」「それはこちらの台詞だよ!」鶴丸の刀を受け止めたのは、駆けつけてきた石切丸だった。腕力で圧倒的に勝って押し返す。鶴丸は後ろに二、三歩よろめいた。「僕から説明するよ、それでいいかな」刀を構えたままの石切丸に鶴丸はため息をついて刀を納めた。「この状況で、俺に選択肢は無さそうだ」「ありがとう、そうしてもらえると助かるよ。今剣、君も降りておいで」刀を構えたまま飛び移った木の上から今剣が降りてきた。「刀はしまって」「でも」「今度は君に向けようか?」構えた刀の角度をわずかに変える。さわっただけで斬れそうな刀身が月明かりを受けて鋭く光を返した。「…勘弁してくれ」今剣は肩を落として刀をしまった。二人から戦闘の意志が消えたことを確認し、最後に石切丸が刀をしまう。
「ばれたな」
「ばれないと思いこめるのが不思議だけだけどね」
「わるかったな」
「君は出てきすぎ」
「お前は構いすぎだ」
「ああはいはい」
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