明石×女審神者(創作)のハロウィンネタ。
エロは無い。
うちの明石はヘタレです!!!!
くっついている前提みたいな話になってるので、他のやつと時系列は別に読んでもらえると・・・
私が好きだから書いた!!!!って感じです。
エロは無い。
うちの明石はヘタレです!!!!
くっついている前提みたいな話になってるので、他のやつと時系列は別に読んでもらえると・・・
私が好きだから書いた!!!!って感じです。
明石国行が審神者の部屋の扉を開けると、大量の菓子に埋もれた審神者がいた。
「何してはりますの」
机の上一杯に乗った色とりどりの菓子を零れないように器用に積み上げている。
菓子で埋まってしまった机が審神者の仕事机なのだが、これではとても仕事どころでは無いだろう。
明石の声に菓子の山から顔を上げた審神者が、眉根を下げて笑った。
「明石、トリックオアトリート?」
「あぁ、ハロウィンですか。これは配る用意?マメですなぁ」
「違う違う。これはね、もらったの」
「もらったぁ?」
確かに机の上の菓子は、配るために買い込んだにしては種類も様々だ。
彼女がせっせと手を動かしているのも、配るための菓子を包んでいるのではなく、もらった大量の菓子の賞味期限をチェックして、足の速い物から順に仕分けるためだった。
机の上は一杯だが、彼女の隣は空いていたので、明石はそこに腰を下ろした。
視線が低くなると、大量の菓子に迫力が増す。
「もろたて、誰にですか?こんなに大量の菓子、石切丸はんも持ってへんやろ」
この本丸の石切丸は、いつも着物の中に飴やらグミやらの常温で溶けない小さなお貸しを持ち歩いている。
自分が食べるためというよりも、何かしらの折に触れてその菓子を配るためのようだ。小腹を空かせた短刀たちが石切丸を取り囲んでいる姿を時折見かけていた。
審神者は作業する手を止めずに、首を左右に振る。
皆に貰ったのよ。最初は五虎退がきてね、と審神者が話し始める。
いつも通りに起き出した朝。
まだ近侍が来るにも早い、身支度を整えたばかりの時間に、軽い足音が賭けてくるのが聞こえた。
今日の近侍は歌仙にしていたはずだが、彼の足音にしては軽すぎる。
怪訝に思っていると、襖の向こうから入室の伺いを立てた声は五虎退のものだった。
朝日を受けて障子に映る影は、五虎退といつもお供につれている虎たちのふわふわとしたものだった。
「どうぞ、こんな早くにどうしたの?」
遠慮がちに障子を開けた五虎退は、一歩部屋の中に入っただけで、それ以上は踏み込んでこなかった。
変わりに、ぱっと笑って主様!と、彼にしては大きな声で
「主様、今日は何の日かご存知ですか?」
「今日・・・・・・?」
首をかしげてカレンダーに目を向ける。今日は10月31日。
10月31日の日付のところに、仕様でプリントされている南瓜のマークが目に付いて、審神者はあっと声を上げた。
忘れていた。すっかり忘れていたのだ。
これだけ大量の短刀がいるというのに、彼らに配るお菓子の一つも用意していない。
「ハロウィン、だね」
「そうです、ハロウィンです!」
五虎退の笑顔が朝日のように眩しい。申し訳なさが一層増す。
笑顔から発せられる神々しいオーラのようなものを遮りたくて、審神者は右手を上げた。
「ごめん、五虎退、申し訳ないんだけど、私今日何も準備してなくって」
「主様は、何も準備なんていりません!」
「え・・・?」
再び軽い足音を弾ませて、五虎退が審神者の側までやってくる。
座っていると見上げる高さにある五虎退の顔が楽しげに笑っている。
「主様、ハロウィンのお決まりの台詞を、どうぞ!」
「お決まりの台詞って、え?トリックオアトリート?」
「さすがです、主様!」
五虎退は胸の前で拍手をすると、あっけに取られている審神者の手に、クッキーの入った袋を乗せた。
「ハッピーハローウィン、です!」
満足気に部屋を出た五虎退は、襖を閉める前にそう言って去って行った。
それを皮切りに、次から次へと刀剣たちが訪れて、審神者に菓子渡して行ったらしい。
「途中で乱に話を聞いたらね、『この本丸で一番年下なのは主様だからね、一杯甘えちゃって!』って」
「はぁ、確かに年だけ言うたらなぁ」
「短刀たちから子ども扱いされると、なんだか愉快な気分だよ」
気がついたら賞味期限仕分けを手伝わされていた明石が、さよかと審神者の横顔を覗き込んだ。
実年齢よりも少々若く見える顔立ちだが、確かに短刀と並ぶと、容姿だけなら審神者の方がどう見ても年上だ。
短刀からだけではなく、他の刀からも信の置ける主として頼られているので、彼女が誰かに甘えている姿はあまり見ない。
突然訪れた非日常なイベントに、彼女は素直に喜んでいるようだった。
かわいらしい菓子の山相手に、こんな子供のように笑うのだな、と明石の唇の両端が上がった。
「楽しかったみたいで、なによりです」
「ね、明石」
「ん?」
「トリックオカトリート?」
いつもと違う、すこし子供っぽいはしゃいだような笑顔を正面から向けられて、明石は一瞬動きを止めた。
有り体に言えば魅入ってしまった。
「主はん・・・」
「ん?」
「いや、そんな顔もしぃはるんですね」
「なにそれ」
明石の言葉に審神者が声を上げて笑った。
彼女のこの表情を引き出したのが自分ではないことが少し歯がゆかった。
胸の辺りが小さく痛むのを誤魔化すように、菓子の山に顔を戻して作業に戻ろうとすると、審神者が明石の方へ身を乗り出してきた。
「何ですの、狭いですやん」
「何ですのは、こっちの台詞なんだけど?」
審神者の言わんとするところを図りかねて、明石が眉をひそめると、審神者は再び先ほどの台詞を繰り返した。
「トリックオアトリート?」
「主はん、こんなに菓子だらけで、まだ欲しいんですか?」
「ハイ残念、時間切れ」
審神者は明石の両肩に手を置いて彼の体を固定すると、体をぐいと寄せて、明石の頬に軽くキスをした。
右に、左に、最後に鼻の頭にキスを落す。
明石は、間近に香る彼女の香りに、眩暈のようなものを覚えて身動きが取れなかった。
「お菓子くれないから、いたずらしちゃった」
顔を離した審神者は満足気に笑って、何事も無かったかのように座りなおし、仕分け作業に戻った。
審神者が離れて漸く、明石の顔にかっと一気に血が巡る。
「あ、主はん!」
なんとか絞り出した声は思いの外大きかった。
お菓子を持つ審神者の手首をつかむと、審神者がこちらを振り向く。
すまして見えた彼女の頬も、赤く染まっていた。
明石は審神者の頬に手を添えて顔を寄せると、審神者が真っ赤な顔を隠すように、ぎゅっと目を閉じた。
そんなことをしても何も隠れないのに。
腹の底辺りから、なんとも言えないくすぐったさが込み上げてきた。
彼女の唇は、まだ菓子を含んでいないはずなのに、甘かった。
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