実りの秋ですから!!!
妹のススメでアニメを見たらどっぷりはまってしまったので是非妹には責任をとってもらいたいです(真顔)
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妹のススメでアニメを見たらどっぷりはまってしまったので是非妹には責任をとってもらいたいです(真顔)
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「うわ、トサカ君、それどうしたの」
朝食を食べてから姿を見ていなかった坂本が、真っ赤な髪と同じ色の真っ赤な夕日を背負って、真っ赤に熟した柿を両手一杯に抱えて、帰ってきた。
部屋の奥で本を片手にごろ寝を決め込んでいた。
午後の陽気に包まれてうつらうつらし始めていたところで、坂本のよく響く声にたたき起こされたのだ。
嫌味の一つでも言ってやろうと目尻を吊り上げて勢いよく扉を開けた。
「おー!ソウちん!たすかったぜよ~!」
赤い夕日に赤い髪に赤い柿と、何処もかしこも真っ赤っかに染め上げたその姿に、廊下を歩いている間中考えていた言葉が全部どこかへ飛んでいってしまった。
「これがもう重くてのう。おとせやんのとこの斧より重いかもしれん」
両手一杯の柿の重みに引っ張られるように前のめりで扉をくぐる坂本。
沖田は咄嗟に道をあけた。
坂本は玄関から直接つながっている土間へ向かう。
「ちょっと、トサカ君」
「おわっ!」
土間へ向かう坂本の首根っこに手を突っ込んで引き止めた。
前のめりに進んでいた坂本が急に後ろへ引っ張られて1、2歩よろめいた。
「何するんじゃソウちん、危ないじゃろ!」
振り返る坂本の顔をわざとらしく下から覗き込む。
しかし上目遣いではない。下から目尻がよりあがって見えるように睨みあげるのだ。
「それ、どうしたのって、訊いたよね?」
「それ?」
扉を開けた瞬間に尋ねた言葉は届いていなかったのだろうか。
坂本は大きい目で何度かパチパチと瞬きしただけだった。
トサカが生えている頭の中身もやっぱり鶏にそっくりだ。
「そ、れ!」
坂本の服を着た鶏が頭をよぎって思わず笑いそうになったのを飲み込んで、彼の両腕に大事そうに抱きかかえられた柿を人差し指でツンツン突く。
「おお、これか!」
「こんなたくさん買うお金、トサカ君持ってないでしょ~?」
「失礼だぞ、ソウちん、ワシだって柿の2、3個買える小遣いくらいもっとる!」
「これ、2、3個じゃないから。」
両手で抱えている柿の数は、ぱっとどう少なく見積もっても、遠近法を使ったとしても、2、3個にはとても見えない。
「で、どうしたの?」
「そうじゃった。ちょっと河原へ行ったらあんまり天気が良いから一人でうたっとったんじゃ。」
邪気なく笑う坂本。
「またそんなことしてたの?勝手に一人で好き放題歌っちゃ駄目って言われてるでしょー?最近は取締りが厳しいんだから。」
「いやぁ、こんないい天気で歌わずにいられない方が変ぜよ!」
「その理屈だと、日の本の人間の9割9分くらい変人だね~。」
喋りながら土間に行き、乾かしてあった笊の中に両手一杯の柿をゴロゴロと入れた。
「でな、歌っておったらおばあさんが通って」
坂本は漸く自由になった両腕を伸ばし、揉み、肩を前後に回した。
「……おばあさんが通ったから、荷物持ってあげたらお礼に貰ったとか言わないよね?」
「なんじゃソウちん、見とったのか?」
「そんなわけないでしょ。君たちが好き放題出かけるから一日中留守番だったんだよ。」
「そりゃぁラッキーじゃったな。」
日のあたりが余りよくない土間でも坂本の笑顔がまぶしい。思わず目を細めてしまう。悔しいと思った。
「何がラッキーなわけ?」
「ほら、一番のりじゃ。」
ずい、と差し出されたのはさっきまで坂本の懐に抱えられていた柿の一つ。
真っ赤に熟して、皮が少したるんでいる。もう熟れきって、熟した果実が薄い皮の下でつぶれ始めているようだ。
「ま、そういうことにしておいてあげるよ。」
そっと受け取った柿は、思ったとおり持っただけでやわらかいと分かるほどの熟し具合。たいそうその実は甘かろう。
思わずほころんだ唇に、坂本は満足そうに頷いた。
皮に両手の親指の爪をたてて少し力を入れると、皮は容易く破れる。
指先で熟してほとんど水分と化した果肉がつぶれて親指の爪に食い込んだ。
思わず舌なめずりする。
実を手のひらに包むようにしながら果実を割ると、皮が破れた部分から亀裂が広がり、じゅくじゅくにつぶれた実が姿を現した。
半透明になった果肉からにじみ出た果汁が沖田の手のひらを濡らす。
手首まで流れてきた汁を舌先で掬うと、強い甘みが口内を満たす。
半分に割れた実の片方にかぶりつく。熟しきった果肉を齧るのではなくすすり上げると、甘い果汁とともに口の中に滑り込んできて、ほんの数回噛んだだけで喉の奥へ飲み込まれていった。
色白の沖田の顔の中で上品に赤い唇が、柿の果汁と果肉で濡れていた。
唇の中から伸ばされた、果肉よりも赤い舌先が、唇に付いた果肉を舐めとっていく。
「うまそうじゃのう。」
普段あんなに気取った彼が、立ったまま果実にかぶりつく様に魅入っていた坂本が溜息のように零す。
「甘いよ。トサカ君も食べなよ。」
上機嫌に唇の両端を上げる沖田。
「そうじゃな、ワシも頂戴するぜよ。」
坂本はそういうと、沖田の細い顎を捕えて、顔を近づける。
沖田は目を見開いたが、文字通りあっという間に唇に唇が触れて、触れたまま坂本の舌が、咄嗟に閉じた沖田の唇と、その周りに付いた果肉を舐めとっていく。
余すところなく丹念に舐めて、最後は頬の辺りから輪郭を辿って滑り落ちていった果汁を追いかけて、頬から顎への輪郭をそっと舐めて離れていく。
「ほんに甘いのう!」
口元だけが赤かった沖田の顔が、今度は余すところなく紅色に染まっていた。
「食べなよって!そうじゃないでしょ!何考えてるのさ?!」
「ん~?ソウちんがあんまりおいしそうに喰うとったからのう。」
「信じられない……。」
赤くなった顔を落ち着かせようと頬を撫でるがかっかと火照って全く効果はない。
顔色一つ変えずに自分が食べる柿を選んでいる坂本の唇の端に果肉が少し付いているのを見つけた。あれが自分の唇につい先ほどまであったものだと思うと唇が熱いと自覚できるほどに火照る。
沖田は先ほど食べた実の皮を流しに置くと、柿を選んでいる坂本の顎を掴んで、無理やりこちらを向かせた。
燃えそうな唇で、彼の唇に付いた果肉を吸い取る。
そのままの距離で唇だけ離すと、鼻先がくっついた。
至近距離で睨みつける。
大きな坂本の目に、自分の目が映っている。
「どうせ食べるんなら、全部食べてよね。」
坂本は一度目を丸くして、に、と笑うと、沖田の髪を撫でた。
「ソウちん、柿みたいぜよ。」
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