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[ 2024/11/25 06:21 | ]
【虎牛】処女牛尾のプロポーズ【のあさんへ】
のあさんに頂いた処女牛尾バッグチャームの御礼虎牛

※牛尾さんはにょた
※ファンタジー仕様。DBパロといって伝わる人は僕と握手
※話が膨らみすぎて長編の一部みたいな雰囲気小説になりました本当にすみませんでした。

昔RTでみた「男装して男の膝にすわって僕をさらえって言う」のをやりたかっただけだった
からんからん、
扉を開くと、扉に取り付けられたドアベルが揺れ、奏でる音が糸のように細い三日月が似合いの温い夜に染みこんだ。
全身を黒の衣装に包んだ細身の男の胸元、そこだけ色彩を放って目立つ金の十字架。

「やあ、大河。久しいじゃないか」

カウンターの向こうでグラスを磨く、年齢不詳の男がこの店のマスターだ。
柳腰、という言葉が似合いの滑らかに細い体は、もしかして女だろうかという噂も立つのだが、硬そうに見える唇からつむぎだされる声は男のものだった。

大河は返事代わりに牙を見せて笑い、マスターが立つ目の前の席を選んでカウンターに座った。
照明の弱い店内で客の手元だけ照らす蝋燭の光を受けて、大河の胸元のクロスが光を散りばめる。
マスターがまぶしそうに目を細めると、その目じりに小じわが寄った。

「いいのかい、『狩られる者』がそんなものつけていて。それとも、獲物のオマケ?」
「いいんだYo。オマケなんかよりずっといいもんだZe。」

十字架を繋ぐ金の鎖を指に絡めて持ち上げ、彼女がそうしたのをまねて唇をつける。そのまま鋭い牙で十字架の角を噛むと、ひやりと冷たい歯ごたえが返ってきた。

妖魔と人間が互いの喉仏に刃を突き立てあいながら生きている中、十字架は普通、妖魔を狩るだけの力を持たない人間が、魔よけのために持つものだった。
妖魔を狩るための力を持った人間を「狩る者」、それに対して妖魔を「狩られる者」と皮肉をこめて呼ぶ。
大河は狩られる者だ。
しかしこの十字架をこうして身に着けていても痛くもかゆくも無い。なんとも魔よけの胡散臭いことである。

赤い舌先が金の十字架をたどると、まだ新しい記憶が蘇る。

もう使われていない古びた塔の中で、錆のにおいを嗅ぎながら、妖魔を駆逐する人間『狩る者』に刻まれた大きな刀傷を眺めていた。
出血が多くて、夏なのに指先に感触が無いほど冷たいと感じた。

さすがにもうだめか。

諦めて瞼を下ろしたとき、鼻先を甘い香がかすめ、痛みが引いていった。
もう一度瞼を上げると、暗闇に豊かな蜂蜜色の髪を波打たせて、女が座っていた。
女がかざした手のひらの下で、あれほど見事に刻まれた傷が消えている。

「ミカド……、何してんだYo。」
「助けて貰ってたいそうなご挨拶だね。」
女がにこりと笑うとやわらかそうな唇がつやめいた。
彼女は代々優秀な狩る者の家系だったが、彼女は狩るための戦闘能力を持たない。
その代わり、ミカドが強力な治癒力を持っていた。
それは人間にも妖魔にも有効で、ただ自分の傷を治すことはできなかった。
傷がふさがった、というよりは消えてしまったと言った方が正確なほど回復した肌をミカドが撫でる。その桜色のつま先に向かって、感謝を呟いた。

「どうやってわかったんDa。」
「君の血の色をたどったんだよ。」

振り返って視線が示す先には、なるほど点々とこぼした血液がこびりついていた。
闇の中ぼんやりと光を纏わせ浮かび上がる銀の血液。
どこをどう見ても人間と変わりない姿をした大河の、人間でないことを証明する最たるものだ。

じゃあ、とミカドが立ち上がる。
形ばかり膝の辺りの汚れを払って大河に背を向けた。

「君が死んでしまったらつまらないから、ちょっとよってみただけだよ。」

そうして闇の中から月明かりの明るい屋外へと向かっていった。
大河はあっけに取られて、我に返ったときには首に提げた十字架を返し損ねたと、立ち上がって又すぐに腰を落とした。



「私は、別に構わないと思うけど。」
蝋燭の緩やかな揺れに記憶を浮かべる大河を、今に引き戻したのはマスターの穏やかな肯定だった。
「なんのことだYo?」
肩をすくめてみせるが、おそらく筒抜けであることはわかっている。
人間でありながら、この店を営んでいる彼は、相手の記憶が見えるのだ。

まだオーダーも済ませていないのに、深く来い朱色に滑らかな厚い生クリームを乗せたエンゼルキッスが目の前に置かれた。
置いたのはマスターではない。
記憶に鮮やかな甘い香り。
グラスを置いたつま先は、淡い桜色の楕円。
大河が顔を上げるころには、彼女は大河の膝の上に挨拶もせずに座っていた。
やわらかな曲線を男用の固いスーツに包んで、蝋燭の光を受けて艶めく長い足をゆったりと組む。テーブルに置いたグラスを今度は持ち上げて、く、とあおった。

「ねえ君、いい加減僕をさらっておしまいよ。」

声も出ない大河の首に腕を回して、挑戦的に見おろす目から逃れられない。
二人の間で金の十字架が揺れた。

「家もなにも全てすてたよ。さあ、責任を取って、僕をさらって行き給え。」
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[ 2013/05/16 22:02 | Comments(0) | 牛虎 ]

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